IoTおよび低パワーデバイスでのアンテナ整合

アンテナは、民生用エレクトロニクスに欠かせない構成要素となっており、限られた容量のエネルギー源に依存する小型ポータブルデバイスもその例外ではありません。そのため、アンテナには物理的に小さく、パワー効率が高いことが求められます。

FPC1500とアンテナケーブルに接続された整合回路
R&S®FPC1500とアンテナケーブルに接続された整合回路
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課題

送信RFシステムにとって、最高のカバレッジを実現し、消費電力を最小化する上で重要な要件は、アンテナ整合です。それに相反する要件が、アンテナの物理的な専有面積です。IoTアプリケーションで通常必要とされる小型アンテナでは、サイズが制約された状況でいかに性能を保持するかが課題となります。小型アンテナの非効率性は通常、リンクバジェットの計算に含まれており、その対策として送信パワーを増加させます。しかし、これはシステム性能(例えば、バッテリー寿命)に悪影響を与えます。したがって、適切なアンテナ整合が非常に重要になります。よくマッチングのとれたアンテナは、入力として受信するパワーの放射効率を最大化するからです。

ローデ・シュワルツのソリューション

測定面(結合ネットワークとネットワーク・アナライザのケーブル間のインタフェース)での校正は、ケーブルとコネクタの影響を補正するための非常に重要なステップです。手動校正は、オープン/ショート/ロード標準を手動で切り替えるとエラーが発生しやすく、時間がかかります。R&S®ZN-Z103 校正ユニットを使用すると、標準の切り替えを自動化できます。これにより、接続エラーが減少し、校正時間が数秒に短縮されます。アンテナ整合では、以下の手順を実行します。

  • 校正
  • 測定
  • 調整
USBポートでZN-Z103 校正ユニットを検出
USBポートでR&S®ZN-Z103 校正ユニットを検出
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校正

まず、測定条件として、必要な周波数レンジ、分解能帯域幅、測定ポイント数を設定します。そのあと、R&S®ZN-Z103をR&S®FPC1500のUSBポートに接続します。測定器は、校正ユニットを自動的に認識します。次に、同軸ケーブルの一方の端をR&S®FPC1500の出力ポートに、もう一方の端を校正ユニットにネジ止めします。"Calibrate → Full 1-port" を押します。これで測定器が校正されました。

複数のマーカーを使用してR + jXインピーダンス値を記録
複数のマーカーを使用してR + jXインピーダンス値を記録
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測定

筐体、ラボにある機器、ケーブルあるいは測定デバイスなど、アンテナの近くにあるオブジェクトによって、アンテナの放射パターンとその入力インピーダンスが変化します。そのため、アンテナを、その目的の動作領域の環境にできるだけ似せた形で配置することが重要です。
整合ステータスを視覚化する最も簡単な方法は、スミスチャートです。スミスチャートは、R&S®FPC-K42 ベクトル反射測定オプションを介して利用できます。マーカーのR + jXインピーダンス値を記録します。これはおそらく、ミッドバンドで行うか、または複数のマーカーを使用して複数の周波数で行うのが最適です。

調整

必要となる整合回路の計算には、数多くのシミュレータが使用できます。計算が終了したら、組み上げてアンテナに取り付けます。整合品質を確認するために、整合回路付きのアンテナを再測定してアンテナ全体の特性を評価します。

わずかな調整が必要になる場合があります。これらの変更の追跡は簡単です。R&S®InstrumentView(測定器に無料で付属しているPCソフトウェア)で記録して比較します。

まとめ

IoTデバイスや低パワーデバイスでのアンテナ整合は、物理的なサイズ、消費電力、信号カバレッジの適切なバランスを見つける作業です。R&S®FPC1500を使用すると、アンテナの反射性能を測定できます。その結果が、バッテリー寿命と信号カバレッジ/受信に関して最高のユーザー体感を達成できるよう、デザインを修正してアンテナ整合を最適化する際の助けとなります。

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