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R&S®Essentials | 電源の基礎

定電圧と定電流を理解する

著者:電子計測エキスパート、Paul Denisowski

ここでは、ベンチDC電源の定電圧モードと定電流モードの違いについて説明します。

ベンチDC電源を使用する際には、最初に出力電圧を設定するのが一般的で、ほとんどの場合、電源はいわゆる定電圧モードで動作し、接続されている負荷に関係なく、一定の同一電圧が供給されます。

出力電流はオームの法則に従って接続されている負荷の抵抗によって決まり、ユーザーが直接設定することはありません。しかし、ほとんどのDCベンチ電源には、ユーザーが設定できる、以下のような「電流」設定が用意されています。

過剰な電流を回避するにはどうすれば良いか?

通常、最新のベンチ電源では出力をモニターし、負荷に流れる電流量をリアルタイムで把握することができます。負荷抵抗が小さくなって、予期せず過剰な大電流が発生することがあります。大電流が流れると負荷が損傷または破損するおそれがあるため、こうした状況が起こらないようにすることが重要です。

このために電源には、主に次の2つの方法が用意されています。

  • 「過電流保護」(「電子ヒューズ」):電源が電流のしきい値を超えた状態になっていることを感知した場合に、電源出力をオフ(「スイッチオフ」)にします。出力をオフにすることで負荷は保護されますが、電源を完全にオフにすることが望ましくない場合もあります。
  • 「定電流モード」:電流がしきい値を下回るように電圧を低下させます。

定電流モードとはどのようなものか?

電源で電流値を設定すると、最大許容電流(電流制限値)が設定されます。これは、出力電流がこのしきい値を下回るように制御または設定するものではありません。定電流モードでは、出力電圧を下げることで、出力電流が最大値を常に下回るように維持されます。

多くの場合、電源では、表示色が変わったり、"CC" アイコンが表示されたりして、定電流モードになったことが視覚的にわかるようになっています。定電流モードへの切り替えはリードバック電流値に基づいて行われます。ユーザーがボタンや設定を使って切り替えを行うことはできません。

例:定電流モードの仕組み

1. 電源出力を電流制限値1.5Aで10Vに設定します。負荷抵抗が10Ωの場合、オームの法則に従って、電源出力は1Aになります。これは電流制限値を下回っています。

2. 抵抗が20Ωに増えた場合、電圧は10Vのまま変わらず、電流は0.5Aに低下します。

3. 仮に、抵抗が5Ωに低下し、電圧が10Vのまま変わらなかった場合、電流は2Aに増大し、電流制限値を超えてしまいます。

4. この場合、電源は定電流モードに切り替わり、出力電流が設定した最大値である1.5Aを超えないように、出力電圧を7.5Vに低下させます。さらに負荷抵抗が3Ωに低下した場合には、出力電流が1.5Aを超えないようにするため、電源は出力電圧を4.5Vに低下させます。

5. 「定電圧」モードでは電圧が常に一定に維持され、「定電流」モードでは、電流が常に一定に維持されます。

定電圧、定電流、定抵抗

アプリケーションに応じて、電圧、電流、または抵抗を一定に維持することが重要です。このためには、CVモード、CCモード、CRモードを使用します。

定電圧(CV)モードでは、出力電圧は設定レベル(例:5V)で常に一定に維持されますが、電流はDUTの挙動に応じて設定された電流制限値内で変動します。ローデ・シュワルツのすべての電源は、定電流モード(CC)で動作することもできます。この場合は、各チャネルを個別に設定できます。このモードでは、プリセットされた定電流がDUTに流れます。電流を設定値に維持するために出力電圧の増減が行われるため、電圧が変動します。また、電源を電子負荷として動作させる場合は、定抵抗モード(CR)を使用することができます。このモードでは、電源は、負荷範囲全体にわたってユーザー設定可能な定抵抗のように振る舞います。このため、一定の負荷抵抗でのバッテリーの放電動作のシミュレートを行うことができます。

DUTの負荷電流が小さく、消費電流が設定された電流制限値より小さい場合、電源はデフォルトでCVモードで動作します。電圧が一定値になるように調整され、電流は負荷に応じて変動します。DUTの負荷電流が大きく、負荷に流れる電流が設定された電流制限値より大きくなる場合、電源はデフォルトで電流を設定値に制限し、CCモードで動作します。電流の調整が行われ、電圧は負荷に応じて変動します。

まとめ

  • ほとんどのDCベンチ電源は、通常、定電圧(CV)モードで動作します。
    • ユーザーは必要な出力電圧を入力します。
    • 出力電流は負荷抵抗に左右されます(オームの法則に従う)。
  • 定電流(CC)モードは過剰な出力電流から負荷を保護するのに使用します。
    • ユーザーは最大許容出力電流を入力します。
    • 出力電流が常にこの制限値を下回るようにするため、電源は自動的に出力電圧を下げます。
  • CVモードとCCモードの遷移は、リードバック電流値に基づいて行われます。

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