R&S®Scope Rider RTH – 電気自動車の高速デバッグ

ハンドヘルド・オシロスコープ 2月 03, 2020

R&S®Scope Rider RTH – 電気自動車の高速デバッグ

ドイツ、バイロイト大学のエレファント・レーシング・チームは、FR19 Lokiと名付けられたレース用電気自動車の開発と検証のために、信頼性の高い多目的ハンドヘルド・オシロスコープを必要としていました。その目的は、CANバスセンサのデータの監視と解析、EMC測定、および車載用電気システムと高電圧電気システムの測定です。ローデ・シュワルツのR&S®Scope Rider RTH ハンドヘルド・オシロスコープは、完全にアイソレートされた入力と、SPI、CAN、CAN-FD、SENTバス信号用の包括的なトリガ/デコーダオプションを備えており、この作業に最適な電子測定機器です。

電気自動車の耐久テスト

学生フォーミュラ・モーター・レースには、毎年さまざまな大学の学生チームが参加します。ドイツのホッケンハイムリンク、チェコのアウトドロム・モスト、オランダのTTサーキット・アッセンといった世界的に有名なサーキットが、会場として用いられます。これらの競技会はレースだけが目的ではなく、電気デザインの評価やビジネスプランといった静的な分野にも関連しています。

最も重視される分野は耐久レースで、すべての競技ポイントの3分の1近くがこれによって与えられます。最大7台の車両が、22 kmの距離でレースを行います。審判は、車両のエネルギー効率も評価します。電気自動車を運転する学生フォーミュラの参加者にとって、耐久性は特に重要な課題です。わずかな接点の緩みでも、レースからの脱落につながる可能性があるからです。

要件:検証とデバッグ

バイロイト大学のエレファント・レーシング・チームは、2018年のシーズン向けのレーシングカーの開発と最適化のための測定器を探していました。その用途は、EMC測定と、電圧源およびCANバス接続のデバッグです。この測定器は、PCBの検証や、高電圧電源システムの測定にも適していることが必要でした。さらに、ラボとテスト場/レース場の両方で測定を行えるように、堅牢でポータブルなデザインが求められていました。

概要

電気自動車が路上を走行する前には、電子部品の徹底的なテストが必要です。これは、学生フォーミュラのレース用電気自動車の場合も同じです。バイロイト大学のエレファント・レーシング・チームが開発したFR19 Lokiは、チームがデザインしたエピサイクリック歯車と、最新の4輪駆動テクノロジーを採用した、レース用電気自動車です。チームは、R&S®Scope Rider RTH ハンドヘルド・オシロスコープを使用して、包括的なセンサデータを捕捉し、CANバスデコード機能を使用して解析しました。この測定器は、アイソレートされた入力を備えているため、最大1000 Vの電流と電圧を高い信頼性で測定できます。この堅牢なハンドヘルド・オシロスコープは、自動車の電気システムや高電圧電気システムの高速なデバッグに最適です。R&S®Scope Rider RTHはバッテリーで動作するため、ラボでもレース場でも便利に使用できます。

ソリューション:R&S®Scope Rider RTH

これらすべての要件を満たす測定器としてエレファント・レーシング・チームが選んだのは、R&S®Scope Rider RTH ハンドヘルド・オシロスコープでした。R&S®Scope Rider RTHは、きわめて堅牢であり、最大1000 V(RMS)の測定カテゴリIII電圧測定が可能なアイソレートされた入力と、車載アプリケーション専用の解析機能を備えています。

きわめて堅牢で汎用的

ローデ・シュワルツのハンドヘルド・オシロスコープの堅牢さが実証されたのは、2018年にトレーニング場からの帰りの輸送時に起きた事故のときでした。レーシングカーを運んでいたトレーラーが横転し、自動車とツールやアクセサリのほとんどが路上に投げ出されたのです。レーシングカーは完全に破損しましたが、R&S®Scope Rider RTHは、激しい衝撃に遭いながらまったく損傷が見られませんでした。この測定器は、保護クラスIP 51(IEC 60529)と、衝撃および振動耐性に関する該当する軍事規格に適合しています。

R&S®Scope Rider RTHを使用すれば、デバイスやモジュールの検証時やレース場でのデバッグ時に、正しい電圧が印加されており、I2C、SPI、CANバスなどの関連する通信プロトコルが正しく伝送されていることを短時間で確認できます。車載用アプリケーションの場合、このオシロスコープのトリガ/デコードオプションは、通常のCAN/LINバスプロトコルだけでなく、SENT(Single Edge Nibble Transmission:センサデータの伝送に用いられるポイントツーポイントプロトコル)に対するプロトコル解析機能もサポートしています。これにより、SENT伝送の高速/低速プロトコルチャネルの特定のイベント、データ、またはエラーステートの収集が可能です。さらに、ショート/拡張メッセージフォーマットと、各種のCRCチェック方法もサポートされます。

The user menu for the R&S®RTH-K3 triggering and decoding option for CAN bus signals.

During a CAN bus transmission, a missing terminal resistance led to a CAN signal fault. Source: Elefant Racing Team

Debugging at the side of the track using the triggering and decoding option for CAN bus signals. Source: Elefant Racing Team

PCB検証時の測定の例

R&S®Scope Rider RTHは、チームがデバッグに費やす時間を短縮するために何度も役に立ちました。レーシングシーズンが始まるはるか前に、このハンドヘルド・オシロスコープのおかげでPCBの検証が非常に簡単になりました。すべての場所に正しい電圧が印加され、バス通信にエラーがないことの確認を、通常のマルチメータを使用するよりもはるかに短時間で行うことができたのです。これは主に、SPIおよびCANバスのデバッグ作業でした。電子部品を車両に組み込んだら、車両内でのテストが開始されます。

車両の最上部に赤い警告灯が取り付けられており、バッテリーボックス外部で高電圧が印加された場合には、常に高い信頼性で点灯する必要があります。検証の際に、CANバスの伝送エラーが見つかりました。その原因は、実装時に端子抵抗を付け忘れたためであることが明らかになりました。

R&S®RTH Scope Rider - Video

レース場での測定の例

FR19 Lokiは、エレファント・レーシング・チームの現時点で最速の車です。新しいエピサイクリック歯車により、きわめて効率的な動力伝達が可能です。ホイール・ハブ・モーター(各35 kW)による全車輪駆動システムと、トルクベクトルによる作動により、カーブでの最適な牽引力が得られます。

オランダのアッセンサーキットでの耐久テストでは、この車は5位という結果を残しました。3週間後にドイツのホッケンハイムリンクで行われたレースでは、高電圧システムが繰り返し停止したため、チームは棄権せざるを得ませんでした。ほんの数日後にアウトドロム・モストで行われるレースに参加するため、技術者たちはただちに原因の究明に取りかかりました。

最初の解析では、ソフトウェアエラーは特に見つかりませんでした。次に、チームはR&S®Scope Rider RTHを使用して、CANバスの通信を解析しました。何も問題はないように見えました。ただ、低電圧電気システムの測定で、安全ラインに電圧降下が見つかりました。高電圧システムは、安全ラインに電圧がかかっていなければ起動できません。あらゆる徴候がショートの存在を指していました。それはホイールサスペンションに見つかりました。原因は、安全ラインワイヤーが配線ミスのためにリンク機構と接触していたことであるとわかり、簡単に修正できました。エレファント・レーシング・チームは、モストでの次のレースで、耐久テストと全体成績で4位という成果を挙げました。

RTH Scope Rider
RTh Scope Rider
RTH Scope Rider

R&S®Scope Rider ハンドヘルド・オシロスコープ

主な特長

  • 帯域幅:60 MHz~500 MHz
  • サンプリングレート:最大5 Gサンプル/秒
  • メモリ長:最大500 kサンプル、50 Mサンプルのセグメントメモリ

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